自分が自分の未病医になろう

老人病研究所

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「自分が自分の未病医になろう」

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「 『福生先生の専門は何ですか。』と聞かれると、以前はまごまごしたものですが最近は『未病です』と答えられるようになりました。その未病について話します。

・未病との出会い
  未病という言葉は約2000年前の『黄帝内経』という本の中に登場します。黄帝とは中国の歴史上の開祖として登場する人物で、日本ではヤマトタケルの様な人です。この黄帝が岐伯という名学者と医学から天文学、社会学、運命学さらにこの世の森羅万象について問答したのをまとめたのがこの黄帝内経です。岐伯は機知に富んだ人と思われ多くの逸話があります。例えば、黄帝が「最近の若者はどうしてこうも弱くなったのであろうか。昔の者は100歳までしっかり生きたのに最近は50歳ぐらいで病気になっているではないか」と聞かれますと岐伯は莞爾として「それは美酒、美食におぼれ、運動不足のうえにSEXにも溺れているからなのです。」とまあ、切れ味よく解説を下しております。生活習慣病はこの頃から有ったのですね。なんだかホットするような、情けないような話しですが、しかしこの本はただ者ではないと感じました。さらにこの本をめくって行くと文中に『是故聖人不治巳病、治未病』を見つけたのです。ちょっと訳をしますと、「名医は病気になってからの患者を治すのではなくて未だ病気になっていない人を治す。」と書かれています。ビビビ?と来たわけです。『これは究めなければ』10年前の事でした。

・修行への旅立ち
 でも未病って、分かるようで分からないのが本当の所でした。『血、気、水』からなる東洋医学ではその後の未病の意味や定義は陰陽五行説の中で風化してしまって、医食同源にその名残りをすこし留めているだけでした。健康と病気の間ぐらいでしか考えが及びませんでした。
 時代は移って少子・高齢社会の日本。不確実性の時代の中で確実なのは医療費の高騰で、2020年には100兆円との試算も出ている程です。そこで質問です。もし黄帝が「日本の国民皆保険制度はどこまで持つであろうか、してその維持する方策は?」と問いたならば、岐伯ならどう答えるでしょうか。・・・「未病で治すしかあるまい。」ではないでしょうか。そこから私の未病への修行が始まったのです。

・日本版未病の発見

 「自覚症状はないが検査をすると異常があり、放置すれば悪化する状態」これが一つの答えでした。リニューアルした日本版未病の発見でした。この未病の範疇に入るのは高脂血症、高血圧、糖尿病の初期、肥満、ストレス、動脈硬化、脂肪肝、無症候性脳梗塞やB型C型肝炎のキャリアーなど多くの疾患が属してきます。これら未病の状態をコントロールし、病気にならないようにすること、これが健全な高齢社会の実現となるのです。それには先ず生活者自らが自分の身体を分かり、コントロールすることから始まるのですね。病気以前ですので医者でなくてもよいのです。すなわち「皆が自分の未病の医者」になることに目覚めてもらうことなのです。そこで私の啓蒙活動が始まったというわけです。賛同者も増え、今では学会にまで成長しました。10年掛かりました。

・21世紀の医療を目指して
 博慈会老人病研究所ではこの未病を軸に抗老化にも取り組んでいます。「未病と抗老化」を紀要のテーマとして選びました。さあ、自分の未病医になる修行をしていただき、ご一緒にこの21世紀の高齢社会を実りある有意義なものにして行きましょう。