機内食

老人病研究所

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「機内食」

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 久し振りの南の国への出張である。海外旅行の第一歩はまず機内食から始まる。さて、この機内食、中年になるとそれほど期待はかけてはいないものの、少し気になる存在でもある。成田から到着までの約6時間。最近はエコノミ?クラス症候群にも注意しなればならないが、窮屈な空間の中での楽しみは何といっても旨い酒と食事である、と決めている。シートベルトを掛けながらひたすら待っていると何あろう、出てきたのはなんと日本茶と和菓子であった。「なぜタイ航空の機内で和菓子なの?」
 日本の諸々の憂さからおさらばし、早く彼の地へ心を移したいと思っていたのだが,再び日本の現実に引き込まされたのは確かである。此処はどこ,私は誰、の世界が登場してきた。これには考えなくてはならないのである。
 多くの日本人観光客に対するサ?ビスのつもりであろうが,もしそうであればこれはおかしなサ?ビスではなかろうか。外国への旅立ちの第一の楽しみは日常からの脱却であったはず。その日常が飛行機の中まで追っ掛けてきたのである。これって「何とかの深情け」って言うのではではないの。
 そして次ぎに出てきたのは安っぽいプラスチック製の皿に盛られた豪華絢爛というべきか、支離滅裂と言うべきか、形容し難い「特殊食」であった。この機内食だけでアラウンド・ザ・ワ?ルドの味が味わえるのである。蕎麦,ケ?キ,寿司、サラダに,パン、ステ?キ,エビ入りタイカレ?あり,日本茶,コーラ、ワイン,ジャム、さらに中華そばが付いてきて,アンニン豆腐まで出て来た。これだけ小さなスペ?スにこれだけ詰め込んだ技術は並々ならぬものがあると敬服。チャンポン食文化の極みである。
 この傾向は何もタイ航空ばかりではない。JALだって,ANAだって言える。やっと日本を離れたのにこれはどうしたことか。混合食文化で悪名高き東京のレストランだって,こんなメニュ?はない。個々に凛として独立している。ちゃんぽんではない。いつからかこんな食事が機内食の定番となってしまったのであろうか。ここまで乱食になるとちょっと待ってくれよといいたくなる。 飛行機に閉じ込められた乗客はいやがおうでも,地上の食文化とは異なる味覚を体験する事となる。このメニュ?は地上では絶体受け入れられない事を保障する。仮に何処かの物好きシェフが「機内食定食」として試みたしても売れない。まさしく機内食独特の特殊文化と思われる。なぜ機内食はこのスタイルが罷り通るのであろうか。多種多用の人種の方が運命共同体となる一空間に会するため?,万人に食べれるようにとの飛行機会社のサ?ビスのつもりなのであろうか?。もしそうであれば,間違いであろう。私が飛行機会社の支配人であれば,まず機内食のなりふり構わない国籍不明の混合食の廃止をしたい。毅然として単一の統一された食事なるものを出すべきであろう。タイ食でいいではないか。そのためにタイ国に行くので