未病の質

老人病研究所

  • |HAKUJIKAI Institute of Gerontology|

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「未病の質」

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 最近QOLという言葉をよく耳にする。旧OLではない。これはQuality of lifeの略で<生活の質>と訳され、長期に服用する薬の評価の基準の一つとなっている。目的とする症状を治すだけの効果ではなく、患者の日常生活の向上までを目標に入れた治療をすべきであるという考え方である。 以前の高血圧の薬は飲むと血圧は確かに低下するが、脱力感が出たり、うつ状態やインポテンツ、眠気などが出たのがあった。その反省からでもある。長期に使用する薬だけに全体の体調を考えた薬が必要なのは当然でもある。では一体その質というものは何なのか、どこまでをいうのだろうか。
 未病の段階でもこのQOLはキ?ワ?ドである。未病のモット?は自覚症状がない時期より生活全体の改良で異常値を改善させようというのであるから、その期間は薬物療法に比べかなり長いものがある。たとえばワイン。確かに赤ワインは悪くないが、あくまでも他の酒と比較として、<健康には良い>と言ったレベルなのである。他のヨ?ロッパ人と比してほとんど同じ脂肪量をとっているフランス人に心筋梗塞が少ないのは何か、というフレンチパラドックスの解答の一つが赤ワインであった。そして成分のポリフェノ?ルが注目され白ワインよりも赤ワインに多く含まれている事がマスコミに流れ赤ワインブ?ムが生まれた。ポリフェノ?ルは酸化防止作用があり、これが悪玉コレステロ?ルを抑え、ひいては動脈硬化を少なくさせるというスト?リ?である。では赤ワインばかり飲めばよいかというとそうではないことは確かである。事実フランス人にはアルコ-ル性肝炎やアル中患者が日本人の数倍多い。平均寿命も日本人より今では低い。心筋梗塞は減ったがアル中では困る。
「先生、??を飲んでみたいのですが,テレビで大変健康に良いと言っていましたので」 という患者さんが増えてきた。 社会全体が健康に関心を示すのは大いに結構なことだが、健康食品と言う名の商品が巷に多く氾濫してきた。中には薬同様の形をしており、混乱を招くものすらある。さらにその効果のほどには少し首を傾けたくなるのもある。薬については厚労省がその責任の下に効果、副作用をチェックしているが、はたしてこれらの食品はどうなのだろうか。中国製減肥食品はインターネット販売という法律の穴を狙った悪質なものであった。今後もこの様な偽健康食品が出回らないようにするには生活者自身の食に関する感度を良くしなければならないだろう。誰でも納得の行くような食品の効能に適切な評価をするシステムが必要であろう。みのもんた氏だけに頼っているのでは彼とて荷が重すぎよう。健康食品といえど整理された分かりやすい基準が出来ないものだろうか