眼科
多焦点眼内レンズを用いた手術について
1.選定療養とは
多焦点眼内レンズを用いた白内障手術は、選定療養の対象になります
2020年の3月末で、多焦点眼内レンズを用いた白内障手術が先進医療から除外されたことで、医療保険(生命保険)のサービスにある先進医療特約の対象からも外れることになりました。厚生労働省の決定による処置になりますので、日本全国で一律の対応となります。
そのため、2020年4月以降は、多焦点眼内レンズによる白内障手術は自費診療扱いとなりましたが、新たに選定療養の対象になったことで、健康保険との併用が認められました。選定療養とは、健康保険が適用される単焦点眼内レンズを用いた白内障手術と多焦点眼内レンズの差額を支払うことで、白内障手術自体は健康保険で受けることができるという仕組みです。少し複雑な仕組みに感じるかもしれませんが、白内障手術の部分は健康保険が適用され、多焦点眼内レンズの部分は自費扱いという制度になります。
2.白内障とは
水晶体は目の中でレンズの役割をする組織です。正常な水晶体はほぼ透明で必要な光をよく通しますが、水晶体が濁ると光が十分に通らなくなります。これが白内障です。主な白内障の症状には、明るい所で眩しくて見にくい、物がかすんで見えるなどです。水晶体の濁りかたはその方によって異なりますので、症状は様々です。
3.白内障手術
切開します
水晶体を吸い出します
眼内レンズを挿入します
4.眼内レンズ
単焦点レンズ
ピントが合う距離が1つなので、患者さんはご自分の生活スタイルに合わせて、手元から遠くまでのどこか1点で、ピントの位置を選ばなければなりません。選んだピント以外の距離にはピントが合わないので、その距離を見るためには眼鏡が必要になります。
多焦点レンズ
ピントが合う距離が複数あるので、眼鏡に依存する頻度をかなり減らすことができます。眼鏡のかけはずしの煩わしさを解消することが可能です。多焦点眼内レンズは若い頃の見え方のように、眼鏡なしですべての距離にハッキリとピントを合わせられるわけではありません。しかし、おおむねどの距離にもピントを合わせることができます。
5.検査
視力検査
細隙灯(さいげきとう)顕微鏡検査
白内障を実際に観察します。点眼薬で瞳孔を大きくすること(散瞳)により、 水晶体の全体像を知ることができます。
眼底検査、眼圧検査、角膜内皮細胞検査
視力低下の原因が白内障以外にないか、合併症の有無を調べます。
眼軸長測定検査
使用する眼内レンズを決定します。
6.多焦点レンズの留意点
1.車のライトなどの周囲がぎらついて見える「ハロー」や光の周辺に輪がかかって見える「グレア」と呼ばれる現象報告されていますが、
人によってその程度は異なり、半年ほどの間に気にならない程度に落ち着く方が多いと報告されています。
2.夜間に車の運転をすることが多い方、細かな作業を長時間行うことを職業とする方、片眼に単焦点レンズが移植されている方、
などは手術前に時間をかけて検討しましょう。
3.ドライアイ・角膜混濁・チン小帯脆弱など通常の白内障手術で単焦点レンズを挿入する際にも慎重に検討しましょう。